ベートーヴェン/フォルテピアノソナタ第12番「葬送」第13番「幻想曲風」第14番「月光」/大井浩明さん
Music on Click MOCP-10005
お待たせしましたが、ようやく
大井さんの演奏するベートーヴェンシリーズのレビューです><
タワレコに行ったら2種類並んでましたので、迷わず「月光」が入ってる方を買ってきました。
このCD、帯からしてなかなか
大胆というか
挑戦的です(;゚д゚)
「フォルテピアノ8台をたった一人で弾き分ける!奇才大井浩明」うーん、古楽ファンにとってはベートーヴェンのフォルテピアノソナタ集の作品スタイル変遷が、そのまんまフォルテピアノという楽器の
進化の歴史にリンクしていることは常識ですし、古楽器によるベートーヴェンのソナタ集ではいろんな楽器を使い分けるのも
けっこう当たり前ですので、なんだか扇情的にも思えます。
(多分最後の方のソナタは、ワルターとかじゃ音域的に弾けないんでしょ?)
「諸君喝采せよ、モダンピアノによる喜劇は終わったのである!」!?( ;^ω^)正直リアクションに困ります。
あんたギレン?まぁとにかくCDをプレイヤーにぶち込み聴いてみると、これがたいそう
興味深い演奏なのですよ。
この演奏、とにかく古楽ならではのベートーヴェン演奏でして、モダンピアノ演奏では絶対こういうことはやりません。
「俺は古楽のベートーヴェンをやるんだ!」という強烈な意気込みは、必要以上なくらい感じられますとも。
まさに古楽による古楽のための古楽ベートーヴェン。
まず、この比較的初期の作品集のため大井さんが選んだ楽器は、
ワルターのコピー。
ワルターなんて、我々が「古楽ピアノ」と言われて真っ先に連想する代表的な楽器じゃないですか。
あのぺけぺけした素朴な響きでベートーヴェンをやってくれるなんて、古楽ファンはそれだけでうれしいです( ´∀`)
録音はけっこういいと思いますぜ、ワルターの
アクションが生々しくきしむ音が絶対にヤヴァすぎですよこれ。
もはや
近所の公園のブランコみたいなきしみ方。(ヘンな表現)
SI☆KA☆MO、大井さん鼻息荒すぎなんです('A`;)
「
葬送」ソナタの第1楽章から、伴奏音形までもびっくりするほど豊かに弾いてしまう大井さん、時にメインの主題が隠れてしまいそうなほど。
スケルツォでは、
左手の爆発力がマジパネェッ!!(;`・ω・)ワルターが壊れちゃうんです。
「
幻想曲風」では、第1楽章の微妙な間の取りかたとテンポの揺らし方、とてもステキです。
ある意味、レオンハルトのチェンバロ演奏を思わせるところもありますでしょうか。
フィナーレではなんと
楽譜にない(はずの)アインガング登場。キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
そしてメインディッシュの「
月光」は、聴きなじんだ曲なだけにその個性豊かさというかとんがりぶりにいっそう驚愕。
まず第1楽章で、「
♯ソーーーソソーーーー」みたいに繰り返される鋭いリズムの処理ですが、
かなり鋭く取る場合と、
ルーズにゆるく取る場合とあり、弾くたびに毎回全然違います。本当にこんなことやってしまっていいんでしょうか(;´・Д・`)
そしてこの楽章で特徴的な三連符によるアルペジオの伴奏音形ですが、これって普通はある程度無機質に
淡々とやるのが絶対の常識じゃないですか。
ところがこの演奏、
この三連符を妙に不安定な弾き方するので、聴いてるこちらがすごく不安になってしまいます(;^^)
突然強くたたいたり、ほとんど聴こえない弱さになったりするんですよね。
トドメに真ん中辺りで、
右手と左手をわずかにずらして弾いているところがあります。
福田さんがハイドンでこういうことやったと思いますが、ベートーヴェンでもこういうことやる人いるんですね。
第2楽章では、ダカーポ後に
即興的装飾が出まくり。俺はこういうの待っていたんだッ!
フィナーレでは、「
♯ソソソ♯ラ♯シ♯ド♯レシミレ♯ファミレドシ(ナチュラル)ラ」って2回繰り返す例のパッセージを、
前半の繰り返し後「
♯ソソソ♯ラ♯シ♯ド♯レシレミ♯ファミレドシ(ナチュラル)ラ」と、
ちょっとだけ変化を付けて弾いているところが登場します。こういうの大歓迎( ・∀・)
‥と上に挙げた特徴だけでも、まさに古楽ならではの演奏なんだとご理解いただけるかと思います。
私はこの演奏それなりに楽しめたんですけど、でもそれは
古楽ファンの贔屓目のせいであるのは疑いなく、
正直
帯のアオリ文句は大風呂敷広げすぎてますね絶対。
はっきり言ってこの演奏は、モダン楽器派の方からするとほとんど
噴飯ものでしょうな。
上記古楽の自由な解釈を、ベートーヴェンの完璧な造形に加えてしまっているのは、アンチ古楽の人たちからすると許し難いことでしょうし、
なにより一言で言ってしまえば、大井さん
テクニック的にあんまりうまくありません(;´Д`)
モダンピアノの大家たちは、それこそ宝石のように磨きぬかれた完璧なタッチやなんかで勝負しているわけですが、
大井さん全然そんな贅沢なもの持ってませんので、残念ながら。
大井さんは
あんまり指の回り速くないんでしょうね、「葬送」のフィナーレでは走句がいびつに聴こえてしまいます。
「幻想曲風」のフィナーレのトリルも粒が揃ってないし。
私的には、むしろ
このCDの帯が古楽に対する偏見を広げてしまいそうで、不安になります(;´・ω・`)
「モダンピアノの喜劇は終わりだ」っつーよりも、むしろ「
これからが本当の地獄だ‥」という感じもするんですがどうでしょうか。
SA☆RA☆NI、いつものことながらすげぇどうでもいいところにこだわらせていただきますと、CDのデザインとパッケージがしょぼすぎます。
これで商業販売しないでください。
同人CDですかコレ!?(;`・ω・)ブックレットには肝心の
こだわり古楽メソッドについての解説が、ほぼ全くありません。
ああいう危険なことをやってしまえた根拠が知りたかったのですが。
しかも
ブックレットに細かな記載ミスが頻発。このブログは人のこと言えませんが、まぁお金取ってませんのでご勘弁を(^^)
例えば「葬送」ソナタは変ロ長調だと2回繰り返していますが、絶対に
変イ長調の間違いかと。
他にはCDのトラック表がこんな風になってたり。
[1]葬送ソナタ第1楽章
[2]葬送ソナタ第2楽章
[3]葬送ソナタ第3楽章
[4]葬送ソナタ第4楽章
[5]幻想曲風ソナタ第1楽章
[6]幻想曲風ソナタ第2楽章
[7]幻想曲風ソナタ第3楽章
[8]幻想曲風ソナタ第4楽章
[7]月光ソナタ第1楽章
[8]月光ソナタ第2楽章
[9]月光ソナタ第3楽章
‥えーと、
[7]と[8]が2個あるんですが( ;^ω^)というわけで、古楽ファンなら五十歩くらい譲って笑って許せなくもないかもしれないですが、
それでも
とてもじゃないですが、広くお勧めしたりはできないのがこの演奏です。
この作りで3000円取るのはどうなんでしょうか(´・Д・`)
いつも以上にあら捜しをけっこうしてしまい、ファンの方や関係者の方が読まれたら気分を害されるかもしれませんね、申し訳ありません。
でも再度繰り返しますが、
あの帯の挑発的な態度はいただけませんよ。
イチローくらいの成績を毎年残していれば、少々生意気なことを言っても受け入れられてしまうものですが、
この仕事であれは言いすぎでしたね。
この大井さんのシリーズは、今後もどんどんリリースが予定されておりますよ。大井さんがんばってください。
ぶっちゃけ俺はもう買わないけど。
なお、このCDから
「月光」第1楽章をご紹介している動画をこしらえましたので、勇気ある方はトライしてみてください。
意外とすごく気に入る方も、いるか分からないですし。
ふるふるふるむーん♪
テーマ:クラシック - ジャンル:音楽
- 2008/12/10(水) 21:34:50|
- がんばれ日本の古楽演奏家
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| コメント:6
クセナキスのシナファイを弾く大井浩明のテクニックが弱いなんてことはないと思いたいんですが…
音が少なくなると粗が目立つタイプなんでしょうか?
- 2008/12/11(木) 11:13:26 |
- URL |
- シネ・ノミネ #-
- [ 編集]
お返事が遅くなり申し訳ありません。
大井さんは、もともと現代音楽でちょっと有名な演奏家だったようですね。
うーん、そっちの領域では明らかにすごいピアニストだというなら、
ただ単に私が大井さんの個性を理解できなかっただけなのかも。
よろしければ、このベートーヴェン実際に聴いて確かめてくださいませ。
- 2008/12/13(土) 05:07:40 |
- URL |
- JMP【管理人】 #-
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ただしもう1枚の方です。
確かにたどたどしい感じはしました。
しかしあの値段では買って確かめたいという気にはなりませんでした。
その代わりブリュッヘンの新譜を買ってきました。
そういえばこのブログではトマス・ファイは取り上げないんですか?
最近ヘンスラーがセールやってるのでまとめ買いしたんですが大興奮の代物です。
- 2008/12/13(土) 17:09:27 |
- URL |
- シネ・ノミネ #-
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>確かにたどたどしい感じはしました。
はい、流暢さとかホント欠けてますね。特に速いパッセージで。
>そういえばこのブログではトマス・ファイは取り上げないんですか?
うーん‥(´∀`;)モダン折衷だし、前ハイドン聴いたら全然面白くなかったし‥。
安田さんからすると最高にゴキゲンなハイドン指揮者らしいですが。
ただし、モーツァルトの第39番&「ジュピター」だけは、相当お気に入りです。
私が所有している、たった数枚のモダン楽器演奏の一つ(部分的に古楽器だけど)。
その辺のヘタな古楽より、よっぽどすばらしい古楽やってますよね。
- 2008/12/13(土) 21:39:40 |
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- JMP【管理人】 #-
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七色のタッチというか、音色のアイデンティティーが少ないというかですねえ。オリジナルピアノは、タッチの差が出やすいのでしょうか。現代音楽ではたしかに威力を発揮しそうです。
ソを連打するより、トランスクリプションをしてテレマンの序曲でシを連打してみるとすごく面白い演奏になるかもしれませんね。
- 2008/12/13(土) 23:45:52 |
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- 貧乏伯爵 #B1zGefjA
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またもやコメントいただけて、ありがとうございますです><
>七色のタッチというか、音色のアイデンティティーが少ないというかですねえ
やっぱ貧乏伯爵さんからみてもけっこう微妙ですよね、ちょっと安心しました。
古楽ピアノとモダンピアノ、どっちの方が細かなタッチのミスとか隠せるんでしょうか。
古楽ピアノには私もちろん触ったことありませんので(;^^)
このCD、演奏だけなら普通に「好みの分かれそうなディスク」というだけで終わってたと思うんですけど、
とにかくやたら目立つあの挑発的な帯のアオリ文句ゆえに、
悪い意味で注目を集めてしまうのではないかと、古楽擁護派の私は危惧してしまうのです。
もっと説得力ある古楽器演奏なんて、いろいろあるのに‥。
- 2008/12/14(日) 00:39:33 |
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- JMP【管理人】 #-
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